ミトコンドリアとはどういうものか
生命エネルギーを作り出すミトコンドリア
不妊治療の分野で話題になっているミトコンドリアは、妊活中の女性達の間でも注目を集めています。ミトコンドリアの活性化によって卵子が若さを保て、高齢妊娠の可能性も高まるとされており、アンチエイジングアイテムとしても期待が持たれているのです。
ミトコンドリアはほぼ全ての生物の中に存在している細胞小器官で、人間の身体を構成する細胞というのは約60兆あるとされていますが、赤血球を除くその全ての中に数百から数千のミトコンドリアは存在しています。特に卵細胞内のミトコンドリアは10万個以上と多く、分裂するごとに増殖されていくものです。
身体を動かしたり、考えごとをするのに頭を使ったり、食事で取り入れたものを消化吸収したり、人間はさまざまな動きによってエネルギーを消費していきます。このエネルギーであるアデノシン三リン酸と呼ばれるものを作り出す働きをするのがミトコンドリアなのです。
酸素を吸い込んで血液に運び込まれ、そしてミトコンドリアの働きによって脂肪や糖質を燃やすための燃料に使われます。このエネルギーが体温を保たせ、身体を動かし、命を維持させているのです。
ミトコンドリアと妊活・不妊治療
卵子の老化とは
不妊治療を受けているかたや妊活中のかたがミトコンドリアを意識するのは、卵子の老化に関係しています。妊娠を妨げる大きな原因になるものだからです。
年齢を重ねていくごとに身体はいろいろな機能が衰えていきます。それは卵巣内にある卵子も例外ではありません。卵子の元となっている原始卵胞は、胎児のときに約700万個が生成され、それは経年と共に量を減らして初潮を迎える年齢には30万個にまでになっています。そこからさらに年を重ねる毎に作られていく卵子はどんどん老け込んでしまい、精子と結びついて受精する機能自体も衰えていってしまうのです。
特に昨今では晩婚化が進んで、子どもを望むかたの年齢も上がってきています。機能が落ちた卵子で妊娠をしようとするのですから、妊娠しにくくなってしまうのも自然なことなのです。
年齢と卵子・精子の質
一般的に35歳以上になってしまうと、卵子も精子も質が衰えるとされています。この場合の「質」が指しているのは「染色体異常を持っていない正常な精子と卵子の多さ」です。染色体異常がある場合受精率が下がりますし、受精できても着床せず、また流産の確率も上がってしまいます。これは高齢出産になるとダウン症児が生まれる確率が高くなることとも関係するものです。
染色体異常とは何か
高齢になるほどに増えていく卵子と精子の染色体異常ですが、そもそも染色体というのは遺伝子の情報を持っているDNAという物質の集合体です。染色体の中には継がれるべき遺伝情報がびっしり刻まれています。
生物ごとにこの染色体の本数は異なっており、人間の場合は通常で46本です。ただし、卵子と精子は受精することによって一つの細胞が誕生するため、それぞれ半分の23本の染色体を有しています。そんな卵子と精子は、生成される際のエネルギーが不足してしまうことよって異常を引き起こす確率が上がることが昨今の研究でわかってきました。
このエネルギーを作る元がミトコンドリアです。年齢と共に細胞の中にあるミトコンドリアの活動がどんどん弱まってくることで、卵子と精子の生成過程で細胞分裂の際に染色体異常が発生するのではないかとされています。
染色体異常になってしまうと、卵子と精子に本来23本ある染色体が増えたり減ったりしてしまいます。そのままの状態で受精をしてしまうと、誕生した受精卵の染色体が46本にならないのです。45本になってしまった場合はほとんど着床せず、または流産をしますし、そして47本になった場合は無事に生まれてくることができてもダウン症を抱えることになります。
こうした染色体異常は37歳程度から割合がかなり増え、40歳にもなると染色体異常を持っている卵子が半分以上になるというデータもあるほどです。
ミトコンドリアで卵子に元気を与える
ミトコンドリアを活性化させる
卵子の中には他の細胞とは比べ物にならないほどのミトコンドリアが存在していますが、卵子が老化をしてしまうということはその中に含まれているミトコンドリアも同じく老化をしてしまっているということで、数を減らしたり染色体に異常を起こしたりしてしまっています。
老化したミトコンドリアはエネルギーとなるアデノシン三リン酸を充分に生み出せない状態になってしまいますから、卵子も弱体化していきどんどん老化が進んでいくということです。
ですが逆に言えば、卵子内のミトコンドリアを元気にすることさえできれば、アデノシン三リン酸をたくさん作り出して卵子の質が向上していくということになります。
サプリメントを活用しよう
特に高齢で妊活に励んでいるかたは、ミトコンドリアの質の向上と量を増やすことで妊娠しやすい卵子を作るが可能です。ミトコンドリアそのものをサプリメントで吸収することはできませんが、細胞の老化を予防するサプリメントなどで活性酸素の働きを抑制することで、ミトコンドリアの量を増やし、活動を妨げるものを排除することが可能です。
卵子が本来持っている働きをまっとうできるように、卵子と卵子内のミトコンドリアを活性化させていくことが大切になります。
- トマトリコピン
- コエンザイムQ10
- 亜鉛
- ビタミンC
- ビタミンE
などは高い抗酸化力を持っています。細胞の酸化を防ぐことでダメージが軽減され、遺伝子異常を発生させる割合を低下させられますので、これらのサプリメントと食生活からこういった抗酸化成分を積極的に取り入れていってください。実際にマウス実験では成熟した質のいい卵子の数が向上したという結果が出ていますので、不妊治療の現場でもミトコンドリアの活性化のために抗酸化物質の摂取を取り入れているところも増えてきています。
また、各メーカーからミトコンドリア活性化のためのサプリメントも販売されていますので、検討してみるのもおすすめです。
サプリメント摂取と共にできる対策
ミトコンドリアの養分になる食事
サプリメントで細胞を老化させる酸化を防ぎつつ、ミトコンドリアの養分となる食生活にも意識をしていきましょう。
特に重要なのが糖質と脂質、エネルギーを作り出すために必須となるたんぱく質やビタミンB群などを含んだ食材です。
他にも
- コーヒー
含まれているクロロゲン酸がミトコンドリアが養分となる脂肪を取り込み、燃焼効率をアップさせます。
- 烏龍茶
ウーロン茶ポリフェノールがミトコンドリアを活性化させて、エネルギー生産効率を高めます。
- ブドウとリンゴ
皮に含まれているレスベラトロールに、ミトコンドリアの量を増加させる働きがあることがわかっています。抗酸化作用が強いため、身体全体のアンチエイジング効果にも期待大です。
- 納豆や豆腐
ミトコンドリアを元気にしてくれるピロロキノリンキロンが含まれています。
こういった食材も妊活の役立ちます。バランスよくいろいろなものを摂取するように心がけていきましょう。
空腹感がミトコンドリアを増やすスパイス
空腹を感じることによってミトコンドリアの量が増えるということがわかっています。間食が多く何かしら口にしている習慣が付いている人はそれを改めて、適度にカロリー不足と空腹感を感じるようにしてください。生命維持の危機を感じ取ったミトコンドリアが分裂を活性化させます。ただし、過激なダイエットは禁物です。
また、食事の際には腹八分目の量をゆっくりと食べるようにすることが大切です。早食いも活性酸素を生成させやすくなってしまいますので注意をしましょう。